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過去の駄文を掘り起こしてみた

『クリスマス企画イブ編~クリスマスの夜には』



彩り良く飾られた樅の樹々。商店街やデパートには毎年お決まりのクリスマスソング。行き交う人々もどこか浮かれた様子をみせているそんなクリスマス・イブの夜。僕――秋沢 恭哉(あきさわ きょうや)は唯一人、心の傷が疼くような気がしていた。
ねえ、瑞音(みずね)…君が僕の前からいなくなって丁度一年になるね。この一年、本当に色々な事があったような気がする。でも、僕の中には何も残らなかった。……いや、虚しさと悔しさと不甲斐なさが残ったか。君がいなくなって出来た隙間を埋める為に他の女の子とも付き合ってみた、肌を合わせもした。でも……結局はその娘を傷付けてしまった。
その娘を愛してなかった訳じゃない。僕のことを慕ってくれていた君の妹、僕にとっても妹の様な存在だった鈴音(すずね)。一途に僕を慕ってくれる彼女は、君がいなくなってしまってからの僕の支えだった。だから、彼女に心を委ねた。でも、たぶんどこか君の変わりの様に接していた所があったんだろうな。
今日、彼女は泣きながら去って行った。追いかけようと思ったけど、それはまた彼女を傷付けることになるかもしれないことが怖くて動けなかった。そう、僕は一歩も動けず、結局こうして一年前に君と、今年は鈴音と待ち合わせしていた噴水前のベンチに座っていた。
「本当…最低だな」
そう、他にも待ち合わせるところなんてあるのに、この噴水の前で待ち合わせしていることだって、結局は鈴音と君を重ねている。鈴音に対する侮辱であること以外の何物でもないことに今更ながらに気がついた。気がついて…そして、何も出来ない。
雪が強くなっていく。それとは反比例して僕の身体は力を失っていく。ふっと視界に時計が入った。時計は短針が10をさしていた。
「……当り前か」
もう、あれから12時間も経っている。むしろ、それだけ長い間、外で一歩も動かずにいて生きているのが不思議なくらいだった。でも、それも……ここまで…かな…最後に………








謝りたかったな…







「…………っ!!」
…何だろう。誰かに呼ばれている気がする。なんだか懐かしい感じだ。でも……まだ眠い。
「起きなさい、恭くんっ!!」
…五月蠅いな。ゆっくり眠らせてくれよ、瑞音。……!!?
「瑞音!?」
僕が目を覚ますとそこには――
「やは♪ 久しぶり、恭くん♪」
笑顔の瑞音がいた。あの時と全く変わらない瑞音がそこにいた。
「これは…夢なのか?」
「ん?ん。ここはあの世とこの世の境。恭くん、今死にかけ♪」
…そんなことニコニコと言わんで下さい。その時、ふと思い出した。瑞音がこの笑い方をするのは――
「…瑞音さん、凄く怒っていらっしゃいますか?」
「はい♪ 凄く怒っていらっしゃいますよ♪」
最高に怒っている時だ!
「恭くん、正座♪」
「はい…」
今の瑞音に逆らってはいけない。逆らったら死よりも辛い目にあわされる。
「恭くん、分かっていると思うけど。私が怒っているのは鈴のこと」
真剣な面持ちになった瑞音は単刀直入にそう言った。胸に見えない刃が突き刺さった感じがした。
「…でも、別に二人がどういう付き合い方しているかを怒ってるんじゃないの。最初は傷の舐めあいでも、今はお互いに好きなんでしょ?」
その言葉に僕は唯頷いた。気がついていた。鈴音も瑞音が、最愛の姉がいなくなった隙間を埋める為に、姉の恋人であり、自分の想い人だった僕と付き合っていたことを。
「私は二人がそんな付き合い方でも構わないと思っていたんだ。傷の舐めあいでも恭くんは鈴に恋をして、愛してくれた。でも、今日のはさすがに駄目だよ」
「あそこで…追いかけようとしなかったことか?」
なんだか、答えを目の前に置かれて問題を解いているみたいな感じがした。そう、答えなんて分かりきっていた。僕の言った答えに瑞音は頷いた。
「恭くんの…意気地無し」
「うん。僕も自覚してる。もう、大切な人を失いたくなかった。だから…怖かった」
自嘲気味に笑う。頬を温かな物が流れた。
「…鈴は待ってくれているよ、恭くんの答え。こんなところで死んじゃっていいの?」
「…僕は??」






「生きたい! まだ鈴音に謝ってない! ちゃんとした告白すらしていないんだ!」
心の底から湧き上がる生への渇望。鈴音に会いたいという望み。それが僕にチカラをくれていた。
「…そっか♪ それじゃあ??」
そういうと瑞音は――
「…んっ」
「んむっ!?」
僕にキスをした。途端、身体が熱を持ってくる。凍り付いた身体がとけていくのを確かに感じた。それと同時に意識が薄れていく。
「…これが私からのクリスマスプレゼントだよ。ちゃんと答えてあげてね」
意識のなくなる瞬間、純白の翼をはためかす瑞音の姿が目に入った。天使…か……



「恭哉さん…きょうや、さん……」
誰かが泣いている声が聞こえる。その声の持ち主は、僕の一番大切な人。彼女が、鈴音が待ってる。……起きなくちゃな。
目を開けると、白銀の妖精達を舞わしている曇り空が見えた。声のする方を視線を動かすと、寝ている僕にすがって泣いている鈴音がいた。早く安心させたくて、僕は声をかける。
「鈴音…」
「!? …恭哉さん?」
「ああ、恭哉さんだぞ」
「……恭哉さん!!」
一瞬、目をしばたたかせると、途端に顔を崩して抱き付いてきた。
「ごめんなさい…ごめんなさい、恭哉さん……ごめんなさい」
その華奢な肩が震えていた。だから、僕は鈴音の背に手を回し包んでやる。
「僕もごめんな。鈴音にいっぱい辛い想いさせちゃったな」
鈴音は僕の胸の中で首を振った。
「…違うんです。私が悪いんです。私は恭哉さんをお姉ちゃんの変わりとして見ていたのに、恭哉さんが私をお姉ちゃんの変わりにしていることが辛くて逃げちゃったんです。私は恭哉さんの隣にいる…資格がないんです」
嗚咽混じりにそう言って、僕から離れようとする鈴音。さっきは行かせたけど――
「今度は…逃がさないよ」
「っ!」
今度は行かせない!
僕は鈴音をより強く抱き締めた。
「資格があるとか、ないとか…そんなの関係ない。瑞音と付き合っていた頃の鈴音の気持ちも、僕を鈴音の変わりにしていたことも、そんな事とっくに気がついてた。だけど、今はそんなことは関係ないんだ」
そう関係ないんだ。でも、鈴音が戒めに囚われているなら伝えよう。
鈴音に僕の想いを伝えよう。
「僕は鈴音のことが大好きなんだ。もう、どこにも行かないで僕の側にいてくれないかな?」
「!? …恭…哉さん?」
鈴音がきょとんとして僕を見上げて、そして、再び顔を泣き崩した。ただただ泣き続ける彼女がとても愛しくて僕はキスをした。舌で唇をノックすると、鈴音も口を開き舌を絡めてきた。今は言葉はいらなかった。後は…野暮ってもんだろ?




あれからどれだけ経っただろうか? 僕は隣で眠る鈴音の頭を撫でながら、確かに幸福を掴んだことを確信した。それはきっと瑞音がくれたチャンスだったんだろう。手放したくはなかった人を、一度は手放してしまった人を、しっかりと掴まえることが出来た。
窓の外を降る雪はだいぶ弱くなっていた。僕はその氷の結晶達が彼女の羽ではないかと思った。
鈴を、鈴音を大切にしてね♪ メリークリスマス♪――
そんな彼女の声が聞こえた気がした。だから、僕は――
「・・・メリークリスマス、瑞音」
心配性の元彼女の姿を思い、思わずクスリとしてしまった。眠りに落ちるその瞬間、僕は--








雪の中を舞う純白の天使が微笑んでくれたのを見た気がしたんだ


-fin-
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柳Z(りゅうぜっと)

Author:柳Z(りゅうぜっと)
いたって普通のほめらじリスナーです。
風音様、櫻井浩美ちゃんが大好きです!
イングラム改様から南のてーへん4号という別名をもらいましたw
(エステル狂様の妹の話に反応して、お兄ちゃんとか言ってのが運の尽きw)
最近はゼットン伯爵という呼び方を定着させようとしている。
自称:ほめらじリスナー山口県代表

skype ID:sakura-0214
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